すこしマニアックな話ですが生成部分が違う松ヤニの使い分け、使い心地について検証していこうと思います。
もくじ
【松ヤニの種類について】
ロジン(松ヤニ)は大きく分けてトールロジン、ガムロジン、ウッドロジンがあり、
琥珀色の無定形天然樹脂です。
制作で使うことができるロジンはガムロジンとウッドロジンです。
ガムロジン(WW)は松の樹液から抽出したロジンで黄色味が強く透明感がありほぼ単色です。生産量が多く一般的に普及しています。
一方、ウッドロジン(FF)は粉砕した松の木の根っこから抽出したロジンで飴色~こげ茶色~黒色と重厚感のある色合いをしています。生産量が少なくあまり世の中に出回っておらず、希少なためお値段も高めです。
今回は一般的に彫金の材料として売られているガムロジン(中国産)と蜜蝋を混ぜてミツローを作り、実際に引っ張ってみたいと思います。
【ガムロジンでミツローを生成する】
ガムロジンと蜜蝋を適量用意します。
画像では両方同じように見えますが、ガムロジンは表面をぬぐうと透明感が出て琥珀のような美しい色味が出てきます。ガムロジンの匂いを嗅いでみると松の樹液の良い香りがします。
蜜蝋とガムロジンを鍋に入れ極弱火で溶かしていきます。
焦げないよう温度を測りながらじっくりと溶かし混ぜます。
(温度計は200℃まで測れるものを使ってください。)
完全に溶け合わさるとサラサラの液体状になり不純物がほとんどないような透明感です。
目視で確認できるゴミはなさそうでしたが念のためザルにガーゼをセットして濾過します。
最初は透明感のあるミツローも次第に冷え固まって不透明な黄色になっていきます。
【使ってみた感想】
ミツローを冷蔵庫で丸一日寝かして、ミツローを引いてみた感想です。
*良かった点*
最初べたつきが強いかと思っていたのですが、お湯で柔らかくするとあまりべとつかず柔らかい印象でした。
繊細な引き目が浮き上がり思ったよりも引きやすかったです。
手や指の熱で柔らかくなるので、手の力がない方でも簡単に伸ばすことができます。
*気になる点*
ウッドロジンで作ったミツローよりもコシが弱く、手や部屋の温度が熱いとかたちを保持しづらい傾向にあります。
色味が薄いためひき目の強弱や厚みをとらえるのが難しく感じました。
ミツローを温めるお湯の温度を少し低め(40℃以下)に設定し、部屋を涼しくして扱うのがいいと思います。部屋が暖かいと形状が動いてしまうため薄いものや細いものを作るには向いていないかもしれません。ある程度ボリュームのある引き目に向いていると思います。
指先の温度で容易に柔らかさを保持できるので手びねりに適していそうです。
【まとめ】
後日、実際にガムロジン入りのミツローをキャストに出して風合いを確認しました。
ウッドロジン入りのミツローと比べると繊細でエッジのきいた引き目が出づらいものの、
下の画像のように柔らかいやさしい雰囲気の引き目が表現できたと思います。
ガムロジンとウッドロジン、表現したい形状で使い分けるのも楽しいと思いました。
蜜ろう彫金教室で実際にガムロジンで調合したミツローのサンプルを見ることができます。
ご興味のある方はお気軽に蜜ろう彫金教室までお問い合わせください。
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